猫とり名人

猫とり名人

監督:齋藤新

2006年作品 22分 ビデオmini-DVスタンダード

脚本・編集:齋藤新 助監督:関清香 撮影:矢嶋佑宅・松本竹久・齋藤新・関清香

キャスト:アッキー・さおり・斉藤新・関さやか・新谷聡・リコ・神田健太・やっぽん本田・島津則雄・じゅにあ

上映・受賞歴:
うえだ城下町映画祭第4回自主映画制作コンテスト 永井正夫賞受賞
小津安二郎記念 蓼科高原映画祭 短編映画コンクール

ストーリー:
私は文明の華開くこの明治の世で昔ながらの猫とりを営んでいます。そんな私 の奇妙な体験をこれからお話しましょう・・・・ 人々のため猫を狩る男は、その猫とり技を封印して一年がたった。ある日一人 の若く綺麗な女が猫とりの依頼にくる。女にただ者ではない雰囲気を感じ取っ た名人は封印を解き猫とりに赴く。女に案内されるまま神社に行くとそこでは 人の姿をした猫たちが踊っていた・・・

コメント:
当初は内田百閒の幻想譚のようなものを撮ろうと思った。現代を舞台に猫とり 名人と嘘ついている一人の普通の青年が本当に猫とりを依頼され、行ってみる と人間たちが踊っている・・・そんな話を。
だがちょっとの努力で時代劇にすることができると判断。方針を変換し溝口健 二作品を意識した寓話にしようと思った。 ところがいざ撮り始めると、それまで現代劇のみを撮ってきた者として、リア リズムの足かせが取り払われたことを実感。何でもできると判ると、次々とア イデアが溢れてくる。いや、厳密にはスタッフやキャストから提案される様々 なアイデアを取捨選択しただけだったかもしれない。現代劇なら間違ってもで きないアホな演出が時代劇なら大マジメに実行可能なのだ。 気がつくと、溝口健二を目指していた映画はツイ・ハークみたいになった。 (撮影前のミーティングで参考作品として溝口の「雨月物語」を出し、できれ ばこれを見て参考にしてくださいと言った。撮影後半から現場入りしたキャス トは溝口をちゃんと見てきたにも関わらずその頃には作風がツイ・ハークに なっていて申しわけない事をした。これだったら参考作品として「ワンス・ア ポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱」でも紹介しとけばよかった)
今回の映画ではキャストに松本市内のアマチュア劇団の面々を使わせていただ いた。彼らの芝居っ気たっぷりの演技もまた作品を魅力的にしている。劇団員 相手なら長回しもできるし、演技指導も楽だ。「悪の目つきして」と言うだけ でそれっぽくやってくれる。これがド素人なら「顔の角度は何度・・目の向き はこっちで、口はこんな感じで・・・」と具体的な演技指導をしなければなら ず、とてもめんどくさい。演劇人ならほっとけばオーバーアクトしてくれるの でこっちはブレーキをかけてやればいい。0を5にするより、8を5にする方が ずっと簡単なのだ。
ただし、ただ楽なだけではない。様々な劇団の人間を使っているのだが、そう するといろんな団体とのギブ&テイクの必要が生じる。 こっちは平日仕事して、土日を使って撮影準備と撮影をしなくてはならない。 その貴重な土日が様々な団体との付き合いに費やさざるを得ない。いってみれ ば映画製作における政治的なアプローチである。映画は監督でなくプロデュー サが作るという意見に今までは懐疑的だったが、この作品を作ってその考えも よく判った。様々な団体との折衝がなければ映画など完成しやしない。 結果として本作では絵コンテも他人まかせ、カメラアングルも演出プランも人 の意見を取捨選択・修正・追加したのみ。果たして私は監督という名にふさわ しい仕事をしたのか?
もちろんした。作品の出来不出来に関する責任は全て私にある。そして私の責 任で映画を完成させたのだ。それが監督というものだ。 でも次回はもっとカメラや俳優をこねくり回した映画作りをしたいなと思った。